PMI日本フォーラム2019に参加してきた話

2019年7月20日と21日の2日間、学術総合センターで開催された「PMI日本フォーラム2019」に参加してきました。最後に参加したのが2015年だったので、4年振りとなります。

2015年に参加した当時は「タレントマネジメント」という言葉が出だした頃だったこともあり、プロジェクトマネージャーの能力やコンピテンシーにフォーカスを当てたテーマが主流だったと記憶しています。
4年経った今回は、プロジェクトマネージャーに求められる役割そのものが、従来の「あらかじめ決まったスコープをもとにQCDという目標を達成すべく個別のプロジェクトを回す」というどちらかというと「受け身」のものから、「組織の経営戦略を理解してプロジェクトのスコープ決めの段階から関わることで組織に貢献する」という「攻め」のものに変化しているということを感じました。

その背景にあるのが、昨今盛んに言われる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。プロマネ自身がデジタルを駆使することで変革のリーダーとなることが期待されているということです。

それでは2日間のセッションを簡単に振り返ってみたいと思います。

1日目 7月20日(土)

1日目に聴講したセッションは以下のとおりです。

  • “The Value of Project Management” PMI’s 2019 Pulse of the Profession
  • 近代プロジェクトマネジメントの歴史におけるプロジェクトマネジメントの過去から現在、そして未来
  • Using “Project Management CANVAS” to collaboratively plan your project
  • 産学官共創大学院構想とPM技術習得への動機付け
  • Be the Transformer – DX時代のPPPMとAI活用プロジェクトでの挑戦
  • DX “2025年の壁”克服に向けたSOMPOのチャレンジ

上で書き忘れましたが、今年はPMI本部(米国)の50周年らしく、冒頭の基調講演はPMI設立からの歴史を振り返るようなお話が中心でした。

個人的に面白いと感じたのが、2つ目のセッションで紹介された「Project Management CANVAS」というツール。
雰囲気は「ビジネスモデルキャンバス」に似ていて、これのプロジェクトマネジメント版という感じです。
使いどころとしては、沢山あるプロジェクト候補のうち組織としてどれを優先的に取り組むべきか?ということを検証する際に活用します。その意味では、PMBOKにおける「プロジェクト憲章」と同じ位置付け言えますが、
「Project Management CANVAS」 の場合はステークホルダー全員を集めてワーク形式で意見を出し合って作成する、という点がプロジェクト憲章とは大きく異なるようです。

1日目のセッションで他に印象に残ったのが、冒頭でも書いたDXを背景としたプロマネに期待される役割自体の変化。
従来のように「QCD+スコープを当初目標どおり達成すればOK」という訳ではなく、経営戦略を具現化するエンジン役のようなことが、これからのプロマネに求められるということです。
また、経営戦略と個別プロジェクトの橋渡しとなるのが「プログラム」であることから、今後は「プログラムマネジメント(PgM)」のスキルも重要になってきます。

2日目 7月21日(日)

さて、一夜明けた2日目に聴講したセッションは以下のとおりです。

  • イノベーションを成功に導くためのプロジェクトマネジメント
  • ユーザ体験デザインとアジャイルによる変革の実現
  • 研修会社による【研修の内製化】の提案
  • ステークホルダー・エンゲージメントの勘所
  • ビジネスアナリシスおけるスコープモデル
  • ITを活用した社会課題へのチャレンジ

2日目も盛りだくさんでしたが、特に印象に残った2つのセッションを簡単に振り返ります。

1つ目は「ユーザ体験デザインとアジャイルによる変革の実現」
某超有名なクラウドサービス会社の人のセッションですが、デザイン思考とアジャイルを絡めた非常に興味深いお話しでした。
体験価値を起点に顧客が本当に欲していた「隠れたニーズ」を洗い出し、価値の創造→プロトタイピング→テストの流れでそれを実現していきます。
この実現する部分がアジャイルの出番ということですね(雑)。

もうひとつ印象に残ったのが、ビジネスアナリシスのお話し。
「戦略=どこで勝負するか」、「戦術=どうやって勝つか」
という定義を念頭に置くことで、以降の説明が非常にすんなりと頭に入りました。
SWOT分析等の手法で組織がどこで戦うか(戦略)を決定し、様々なスコープ・モデルを使って戦い方(戦術)を検討します。
スコープ・モデルには色々なものがあって、ケースバイケースで適切なものを選んで使うことができます。(例としてコンテキスト・ダイアグラム、エコシステム・マップ、フィーチャーモデル etc)
セッションの最後で、アジャイルについても少し触れられました。
よく言われる「ウォーターフォール V.S. アジャイル」の二者択一という単純な図式で考えるのではなく、プロジェクトの特性に応じてそれぞれの良いところを取り入れた「グラデーション」方式でプロジェクトを設計する方が、より成功の確率が上がるというお話しでした。私もそのとおりだと思います。

まとめ

紹介した以外にも興味深いセッションが沢山ありましたが、今回は割愛させていただきます。
PMI日本フォーラムに参加したのは今回で5回目となります。
もしかすると私の気のせいかも知れませんが、以前に比べてより実践的で具体的なテーマのセッションが増えてきたように感じます。それだけプロジェクトマネージャーに対する期待が深化・多様化してきている証拠なのかな、というのが全体を通しての感想です。