『従業員の不祥事対応実務マニュアル―リスク管理の具体策と関連書式』読了

「人」に着目した企業運営上のリスクマネジメント。

会社を経営する上でのリスクは様々ですが、「人」とりわけ当該企業の従業員による不祥事というリスクに焦点を当てて、良く見られるパターンの紹介とその対策を解説しています。
本書の内容ですが、不祥事の分類および不祥事が起こる構造の説明が4割、実際に不祥事が起こったときに企業が取るべき対応についての事例を交えた解説が6割、といった構成となっています。
「企業が取るべき対策」に主眼を置いているので、当然のことながら全体的に企業側の目線で展開しています。

従業員の不祥事による企業のリスクは、大きく
・企業に対する法律上の責任(損害賠償等)
・企業の対外的信用の低下(レピュテーションリスク)
・企業内部における企業秩序の破壊(モラルハザード)
の3つ分類されます。

本書の前半部分では時系列に沿った対応(初動対応→調査→被害者対応→懲戒処分等の措置→広報対応)についての解説があり、後半部分では「誰が被害を受けたか」という観点で分類した事例紹介&ケーススタディという構成となっています。
なお、被害者の分類は以下のとおりです。
・被害者が企業(金銭等の不正取得、情報漏えい等)
・被害者が従業員(暴行、ハラスメント等)
・被害者が第三者(暴行、交通事故等)
・被害者がいない(薬物使用、借金等)

自分が雇用している従業員が不祥事を起こすことなど想定している経営者はそう多くないと思いますが、SNSの発達やコンプライアンスが重視される昨今の風潮を鑑みると、リスクマネジメントの一環として「従業員による不祥事」は避けて通れない問題と思います。