『ボーダレス ぼくの船の国境線』を観てきました

ボーダレス ぼくの船の国境線 ★★★★☆
公式サイト:http://border-less-2015.com/

Borderless

イラン映画。
国境付近に放置されている廃船の中でどういうわけか一人で生活する少年。「侵入者は発泡する」との立て札から、非常に危険な場所であることが分かります。

開始30分ほどはセリフが一切なく、ひたすら少年が魚を採ったり貝殻の装飾品を作ったりして生計を立てている様子を描いています。少年の宝物?と思しき物品を集めた木箱の中に家族写真のようなものが見えることから、かつては両親と一緒に普通に生活していたことをうかがわせます。この少年が何故こんな場所で一人で生活しているのか、説明らしい説明は一切無く、映像の中の情報から想像するしかありません。

少年が粛々と船の中で生活する様子を見ているだけでも何故か見入ってしまうんですね。少年にとってはごく普通の日常のはずですが、見ている方としては「次はどんなことをするんだろう」と不思議なワクワク感を抱かせます。

物語も中盤に差し掛かる頃、廃船に「来客」が訪れます。最初は銃を抱えた同じくらいの年格好の年少兵、続いて迷い込んだ米国兵・・・
彼らは言語がバラバラ(ペルシャ語、アラビア語、英語)でコミュニケーションが思うように取れません。それでも徐々に不思議な連帯感が生まれていきます。
本来交わり合うはずのない3人が「国境」の無い廃船の中で言葉を超えて織りなしていく交流。

登場人物は実質この3人だけだし、全般的にセリフも極めて少ないのですが、何かこう静かな力強いメッセージを感じる作品です。
(終)