『ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解』読了

徹底的にムダを省いた結果「人手が足りず時間が無くて業務改善まで手が回らない悪循環」に陥った組織の成れの果て・・・

長期的な組織の存続を考えた場合、外的なビジネス環境の変化に組織が柔軟に対応できなければなりません。
そのためには潤滑油としての「ゆとり」が必要不可欠であり、本来は変革の担い手である中間管理職(一見ムダの象徴とみなされる)がその鍵を握っています。

コミュニケーション、動機付け、目標管理のあり方、リーダーシップ、リスク管理など、出版後15年近く経過してなお学ぶところが多いです。

以下は本書のポイントをまとめたメモです。(ネタバレあり)
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・ゆとりは変化の潤滑油
・人材は完全に代替可能ではない:仕事の切り替えに伴うロス
(労働者は分割できない)
・知識労働者:やりがいは報酬と同じくらい重要
・情報は組織階層図の線のみを通ってはいけない
(健全な組織は線のないところを情報が流れる)
・管理のゆとり:管理者は権限を一手に握ってはいけない

ゆとりのメリット
・対応が速くなる
・柔軟性
・人材を維持しやすくなる
・投資する余地が増える

組織が敏捷であること・変化を受け入れる健全な能力があること:
個人に成長の機会を与える

研究開発費を節約しても将来的な利益にはならない
→ゆとりは一種の投資

・人間はプレッシャーをかけられても考える速度を早めることはできない

・間違った管理の法則
①うまくいかないことがあったら、もっとやれ。
②自分自身がユーティリティ・プレーヤーになれ。

・管理が難しいのは仕事量が多いからではない。
習得する技術が難しいからである。

・恐怖とストレスの文化がもたらす悪影響。

・上層部から押し付けられるプロセス標準化は権限の搾取
(プロセスは現場が所有するのが理想的)

・効率よりも効果(進むべき方向の正しさ)を重視すべきである

・目標管理の停滞(定常的な状態が前提)
→絶えず変化のある組織はプロジェクトが中核
→単純な数値目標で表せるものではない
→外部から与えられた目標は外的動機付けであり、
顧客を満足させる内的動機付けが軽視される

・ビジョンがない企業体は唯一の意味のある自己定義である現状にしがみつく

・リーダーシップ:自分の課題に他の人たちを参加させる能力
→長期的な利益のためにはリーダーシップが必要
→本物のリーダーシップは組織図とは関係ない
→リーダーシップは一部のエリートだけのものではない

・信頼を得るには信頼に足ることを示す
↑その前に相手に信頼を与える(成功するためのお膳立て)

・中間管理職:再生、変化の請負人(ゆとり)
→協力しあうこと
→安全だと感じていること(ある程度の失敗は許される環境)

・リスク軽減のコストが悪とみなされる
→安全速度、リスクの重心を見極める