2013年8月3日〜4日に開催されたPMI日本フォーラム2013に参加してきました。昨年に引き続き2回めの参加です。
今年も非常に有益なお話が聴けましたが、特に「PM育成」と「ステークホルダー」に関するテーマを中心に紹介します。
●基調講演『電子行政の推進に関する取組と展望』
講師:内閣官房 内閣情報通信政策監 遠藤紘一氏
農業、医療・介護、エネルギーといった政府が取り組んでいる電子行政の推進に関する講演です。
これまで行政分野での IT 化は政府としてのビジョンがなく、各自治体や各省庁が個別に動いていたため全体最 適化がなされていないという問題があったそうです。
また、これまでの政府の IT 推進の反省として、PDCA の「P」を立てる ための PDCA が無かった(計画を立てっぱなし)という話がありましたが、これは私が取り組んでいるプロジェクトに おいても非常に参考になる事例でした。
●『戦略的PMO』
講師:PMI本部理事 Steve DelGrosso氏
本講演ではPMOの機能のうち特に「PMの育成」にフォーカスを当てた話を聴くことができました。
複数のプロジェクトを組織として総括的にマネジメントする中で、各プロジェクトを任せるプロジェクト・マネージャの育成も戦略的に実施するのもPMOの重要な機能の一つです。
PMを育成するには、「PM として必要なスキルを組織として定義すること」と「PM だけでなくメンバーもマネジメント・スキルが必要」という話が印象的でした。
●『医療ITプロジェクトの特徴と医療業界への参入戦略』
講師:川崎医療福祉大学教授 宮原勅治氏
医療ITプロジェクトの特徴とその難しさについての講演。
医療ITプロジェクトにとって特に重要なのは、プロジェクトの目的を明確にすること、スコープを定めること、ステークホルダーのマネジメントおよびコミュニケーションを確立すること。特に最重要ステークホルダーである「医師」は、組織に対する帰属意識が希薄で部分最適(自分最適)に陥りやすく、ステークホルダー間での衝突も多くみられ彼らの期待をマネジメントすることが重要かつ困難だそうです。
面白かったのは、医師をはじめとする医療スタッフは、患者を中心にフラットな組織形態となることが多く、ガバナンスが効きにくいという特徴があるという話で、私が普段相手にしている顧客企業とはまた違った難しさがあると感じました。
今後は、医療スタッフの中からプロジェクトを推進するリーダーを輩出していくのが重要課題という話で締め括られました。
●『プロジェクト現場を活性化する“女性PM力”』
講師:PMI日本支部 中村亜子氏、高橋紫氏
私の周辺では「女性PM」に限らずPMのなり手がなかなか育たないという課題を抱えていると感じており、PM育成のヒントが得られることを期待して受講した講演。
女性に限らずPMのなり手がなかなか出てこない状況を打破するためのアドバイスを求めたところ、現任の PM自身が「PM という仕事の魅力を示す(ロールモデルを示す)」ことと、「PMに関するセミナーや研修に行かせる(一 緒に行く)」との回答を得た。まずは自分自身ができることからアクションを起こそうと感じました。
●『渋谷ヒカリエ開発プロジェクト』
講師:東京急行電鉄株式会社 都市開発事業本部 西沢信二氏
2012年4月26日に開業した「渋谷ヒカリエ」の開発プロジェクトの事例紹介。
「ユーザーの利用シーンを逆算してプロジェクトをスタートする」という言葉と、講師自身が「開発プロジェクト」と「運営」の2つの立ち位置を区別して話をされていたのが印象的でした。後者は「話し方」のスキルとして自分もぜひ身に付けたいものです。
●『もし大学 4 年生がプロジェクトマネジメントを実行したら-その後』
講師:PMI地域サービス委員会 野崎晴雄氏
これもPM育成にヒントになれば、と受講した講演。
金沢工業大学の学生を相手に、卒業研究を1つの「プロジェクト」とみなしてプロジェクトマネジメントを実践してもらおうという試み。学生相手ということでマネジメントの概念を理解してもらうのに四苦八苦したようです。
具体的には以下の点に苦労したとのことですが、学生に限らず社会人エンジニアにも該当する人が見受けられるのではないでしょうか。
- 学生は当初の目的を忘れ目の前の課題に目が向いてしまう
- 成果物の概念が曖昧
- 学生は自分で考えることをしないため、ワークショップやブレストをファシリテートする必要がある
- etc
参加を終えて
昨年に引き続きの参加ですが、参加申込みのタイミングが遅かったため、希望していた講演がほとんど満席で聴講できなかったのは残念でした。それでも質の高い講演を聴くことができて大変参考になりました。
今年もまたIT系プロジェクトに限らず様々なプロジェクトの事例に触れて、改めてプロジェクト・マネジメントとは、その人がプロジェクト・マネージャであるか否かに関係なく、仕事を進める上で必須のスキルであると感じました。
(終)